第二十八段

原文

諒闇の年ばかり、あはれなることはあらじ。

倚廬(いろ)の御所のさまなど、板敷を下げ、葦の御簾をかけて、布の帽額(もかう)あらあらしく、御調度どもおろそかに、皆人の装束(さうぞく)・太刀・平緒(ひらを)まで、ことやうなるぞゆゆしき。

現代語訳(訳:きよしち - 2026-04-07

天皇が崩御され、喪に服す諒闇(りょうあん)の年ほど、感慨深いものはない。

倚廬(いろ=喪に服す期間、次期天皇の準備のために設けられる簡素な建物)の御所の様子などは、床板を低くし、葦で作った御簾を掛け、布製の帽額(もこう)を粗く設え、調度品なども簡素にしている。参列するすべての人々の装束、太刀、平緒に至るまで、普段とは異なる喪中独特の姿であるのは、実に厳粛で重々しいものである。

コメント

第二十七段から続く文脈なのか、天皇の代替わりに関することが述べられています。

この段の中では、華美ではない喪中の簡素な建物や衣服などについて述べられますが、こういった簡素なものに囲まれて厳かに行われる儀式にこそ素晴らしい趣があると述べています。こういった、簡素なものを尊ぶ思想は、第二段第十段:でも述べられた内容と一致しており、兼好法師の一貫した美意識が感じられます。また、こういった美意識は現代の日本人にも受け継がれていると思います。

加えて、当時の風俗が生き生きと感じられます。現代でも当然と思われるような風俗については、どこかに書き残しておかなければ失われてしまうのかもしれません。