第七十七段

原文

世の中に、そのころ人のもてあつかひぐさに言ひあへること、いろふべきにはあらぬ人の、よく案内(あない)知りて、人にも語り聞かせ、問ひ聞きたるこそ、うけられね。

ことに、かたほとりなる聖法師(ひじりほふし)などぞ、世の人の上は、わがごとく尋ね聞き、「いかで、かばかりは知りけん」と思ゆるまでぞ、言ひ散らすめる。

現代語訳(訳:きよしち - 2026-08-18

世の中である時期に噂や話題になっていることについて、それと関係の無い人がよく事情を知っていて、人にあれこれと語り、また自分からその噂や話題に関する新しいことを聞き出そうとしたりするのは、どうも感心できない。

特に、片田舎にいる聖法師などは、世間の人の身の上を、まるで自分のことのように尋ね聞き、「どうしてこれほどまでに知っているのだろう」と思われるほどまでに言い触らすようだ。

コメント

第七十六段に引き続き、聖法師に対する苦言のようなものを呈している段だと思います。

噂話というものはいつの世も人を虜にするものなのでしょう。現代では、SNSを通じて様々な話題が飛び交い、人々が議論し合い、炎上などといったことも起こるようになっています。

兼好法師は、そういった噂話はとても感心できるものではないと述べています。ではどうすればいいのか、ということはこの段では述べられていませんが、少なくとも聖法師に対しては、第七十六段で述べられたように、世間とは距離を取るべきだということを考えていたようです。