第五十七段
原文
人の語り出でたる歌物語の、歌の悪(わろ)きこそ本意(ほい)なけれ。
少しその道知らん人は、いみじと思ひては語らじ。すべていとも知らぬ道の物語したる。かたはらいたく、聞きにくし。
現代語訳(訳:きよしち - 2026-06-30)
人が語り出した歌物語で、(そこに詠まれた)歌が下手なのは、何とも残念なことだ。
和歌の道を少しでも心得ている人なら、「これは素晴らしい」などと思って語り出すことはしないだろう。
そもそも全く知らない分野のことを語り出すのは、傍で聞いていて気恥ずかしく、聞き苦しいものだ。
コメント
この段は現代人からすると「歌物語」の意味が少し分かりにくいですね。そもそもいくつかの解釈があるようですが、歌物語というのは「先人が詠んだ歌を引用したエピソードトーク」のようなものだと私は解釈しました。そして、そのエピソードトークで引用されている歌がそのエピソードにそぐわなかったり、不出来な歌を取り上げたりしている場合、話している人の教養が不足していることが伺い知れて残念に思うということを言っているように思います。
何事にも「道」があり、その道に詳しくないのに、知ったかぶりをして話すのは、周囲の人を残念な想いにさせる可能性があるので避けよ、ということでしょう。