第三十七段
原文
朝夕隔てなく慣れたる人の、ともある時、われに心おき、ひきつくろへるさまに見ゆるこそ、「今さらかくやは」など言ふ人もありぬべけれど、なほ、「げにげにしく、よき人かな」とぞ思ゆる。
うとき人の、うちとけたることなど言ひたる、また、よしと思ひつきぬべし。
現代語訳(訳:きよしち - 2026-05-03)
毎日のように親しく付き合っている人が、他人が同席している時に、私に対してきちんとした態度を見せるのは、「今さら他人行儀な」などと言う人もいるだろうが、やはり「実直で、教養のある立派な人だな」と思われる。
疎遠で縁遠い人が、ふと打ち解けた話などをするのも、また、良いものだと感じられる。
コメント
「親しき中にも礼儀あり」という諺で述べていることと同じことを言っているエピソードですね。どれだけ普段打ち解けた会話を交わしていても、時と場所と場合を考えてそれに相応しい振る舞いができる人こそが素晴らしいということでしょう。
一方で疎遠な人とふと親しく打ち解けて、例えば冗談を言い合ったりするのも良いということです。兼好法師は隠者的な生活をしていますが、コミュニケーションが嫌いなわけではないことがこういった記述からも伺えますね。