第四十六段
原文
柳原の辺に、強盗法印と号する僧ありけり。
たびたび強盗にあひたるゆゑに、この名を付けにけるとぞ。
現代語訳(訳:きよしち - 2026-05-23)
柳原のあたりに、「強盗法印」と呼ばれる僧がいた。
何度も強盗の被害に遭ったことが原因で、このような名前が定着してしまったのだという。
コメント
第四十五段と対応するような段ですね。第四十五段ではあだ名に怒ってやめさせようと色々と策を講じる僧のことが語られますが、この段では強盗に遭うといういかにも不名誉なことがあだ名になってしまった僧のことが語られます。
こちらの僧は強盗法印というあだ名を不名誉だと思っていたのかどうかは語られていません。現代的な視点で見れば、周囲の呼称をそのまま受け入れることで、結果的に他者から認知されやすい独自の存在感を獲得しているとも言え、名前への執着を捨てることの奇妙な効用を感じさせる段です。